トルコの犬事情

前回、江戸時代の犬の記事で触れた現代トルコの犬事情を少し紹介させていただきたいと思います。

 

路上の犬猫が堂々と人間と共存していると言われているトルコですが、現地ではどのよになっているのでしょうか?

 

トルコを頻繁に行き来している友人の報告によると、実際、犬猫たちは街の様々な場所にいるそうです。

 

スーパーマーケットやショッピングセンターの中にも自由に出入りし、レストランでは人間用のカウチの上にも寝そべっていたり、お客さんが自分のお皿から食べものを犬や猫に分けてあげたりという光景が珍しくないそうです。
肉屋さんの周りには犬、魚屋さんの周りには猫が多くおり、お店の入口のど真ん中に寝そべっていても、人間は犬にぶつからないよう避けて通っていくそうです。地下鉄にもおり、車両に乗って移動する犬もいるということです。

 

トルコの犬猫たちは、政府によってワクチンや避妊去勢が施されており、万が一ケガをした場合も無料で治療(飼い犬の場合は飼い主負担)が受けられるそうです。
ワクチン接種済の犬の耳にはタグが付けれらており、路上でもすぐに判別できるようになっているそうです。

 

高級スーパーマーケットの店内で涼む犬

キャッシャー内で寝そべる犬(↑の高級スーパーでの犬と同じ犬。いろんな店を移動しているそうです)

服屋さんでくつろぐ犬

トルコ南部ボドルム近郊のスターバックスで寝そべる犬たち

テーブルについている人たちも犬にぶつからないよう注意を払いながら椅子を引くそうです

このように、犬猫たちは街のコミュニティの一員とみなされており、共存が成り立っているようです。実際、トルコの街の犬たちは餌も十分に得ることができているせいか丸々と肥えて、無防備に見えます。

 

前回の記事で、外国人たちが記した日本の犬たちの記録の中にも、「地域の犬たちは飼い主はいないがみな人によく慣れている」また、「石を投げても逃げない」などの内容がありましたが、江戸時代の日本や現代トルコをみていると、人間が動物と信頼関係を築くことができれば、動物は脅威にはなり得ないという例を目の当たりにさせてもらったように思います。

 

ある日、友人夫婦が海沿いのエリアにでかけたときのこと、そこはレストランなどが連なる観光エリアで、日が暮れはじめたのでホテルに戻ろうとしたところ、ビーチのあたりにいた一匹の犬が、彼らを道案内をするように先導してくれたそうです。
友人いわく「わたしたちが地域のゲストだとわかっていたようで、ガードしてあげないとと思ってくれたみたい」だそうです。
その地域からホテルまでは街灯も少なく暗い道が続いており、犬は、おしゃべりをしながらゆっくり歩く友人夫婦の前を先導するように歩き、しばらく行ったら彼らが追い付くのを待つなどしてくれたそうです。
30分ほどの道のりをそうやって歩き、ホテルの近くまでたどり着くと、無事を確認するように、振り返りながらもと来た道を帰っていったそうです。

 

トルコでは路上の犬猫の殺処分が原則禁止(例外あり*)されており、2021年には、動物は「商品(commodities)」ではなく「生きている存在(living being)」として権利を認める法律が議会で可決されるなどしています。

 

前出のスターバックスの写真でこちらを見る犬の表情は、彼(彼女)が自分自身であることを誇りに思っているように見えます。

 

現代の日本では、数は減少してきているものの、環境省によれば令和二年の時点で、23,764匹もの犬猫が殺処分されています。
かつて150年以上前の日本や、今回ご紹介したトルコのように、人間とは種の異なる犬猫が「命あるもの」として、お互いの存在を認め合い共存が成り立っているという光景は、新しい可能性を示してくれているようです。

 

*:トルコでは所有者のいない犬猫について、安楽死は、不治の病による痛みに苦しんでいる場合と、感染症の予防や根絶のため、また、人間の命や健康に脅威になるふるまいがあり、それが矯正不可能な場合のみ許されるとされています。