紫陽花と竹林

外国人の日記を読んでいると、日本独自の植生の豊富さや美しさが驚きと共に書き残されていますが、それは私が長く日本をはなれて実感したことでもありました。

 

その中であらためて好きになった草木に、紫陽花と竹(竹林)があります。アメリカでは竹や笹は中国や日本などアジアを想起させる代表的な植物とされています。実際、アメリカでは竹は日本食レストランの庭やボタニカルガーデンの日本庭園など以外、自然に生えているのを見たことはありません。一時帰国するたびに新幹線から見える山に群生する竹林を眺めては「いま自分の国にいるんだ」と実感して喜んでいました。


スイスの駐日代表だったエメェ・アンベールは『絵で見る幕末日本』の中で、
「よく支柱として使われている竹は、その美しい葉で、果樹の蕾や若葉に劣らない美しさを見せている。だが、私は、竹が巨大な葦のように、一つの集団となって生育している姿を見る方がより好きである。金色の影と重なり合った茂みを持つ高い緑色のすばらしい幹と、よく茂った頭を支える細い強靭な枝、いたるところに無数の長い葉をまとい、空中に立つ数千本の旗のように風に揺れて動いているさま、これ以上、美しい風景はあり得ない。」と記しています。

 

日本の紫陽花は、シーボルトが日本の妻である「お滝さん」の名前を付けたことは有名です。

P・F・B・シーボルト『日本植物誌』より

紫陽花は関東の伊豆半島や房総半島が生育地でヨーロッパにはないため、イギリスのプラントハンター、ロバートフォーチュンよっても紹介されています。当時のプラントハンターは自国にはない観賞用または香辛料に有用な植物を収集するため世界中を探訪しており、アヘン戦争時の清国や日本を訪れています。

 

本来の日本の原種は「ヤマアジサイ」というものだそうで、それがヨーロッパで改良され、のちに日本に逆輸入されたものが、現在わたしたちが「アジサイ」と呼んでいる種なのだそうです。わたしの住む神奈川県西部では、街で見かける紫陽花の数が関西の実家周辺よりもだんぜん多く、住宅の庭から顔を出しているものや山や畑の畔に自生しているようなものまで、青や紫、ピンクや赤など色もとりどりで本当に目を楽しませてくれます。

 

ニューヨークでも紫陽花はありますが、色が白くてあんまりパッとしないなあと思っていたら北米東部原産のアメリカノリノキという品種だったようです。白もかわいいですが、日本のような青や紫色は鮮やかで美しいと感じます。改めて日本の植生の豊かさに驚かされ、とても新鮮な気持ちになります。